6
それでも歯科が怖いあなたへ
〜香りという、見えない光〜
歯科医院の前で立ち止まる。
ドアノブに手をかけて、
しばらく動けない。
「大人なのに」
「こんなことで」
そうやって自分を責めていませんか。
でも、
怖さは理屈ではありません。
過去の体験。
音の記憶。
押さえつけられた感覚。
身体は覚えています。
あなたが忘れようとしても、
神経は忘れません。
⸻
匂いは、記憶よりも深い場所へ届く
香りは言葉を通りません。
鼻から入った分子は、
まっすぐに“感情の脳”へ届きます。
安心した記憶。
守られていた感覚。
ほんの一瞬、
その感覚がよみがえることがあります。
それは治療ではありません。
でも、
固まった心に
小さな隙間をつくることがあります。
⸻
麻酔の前に、祈るように
麻酔の前。
一番緊張が高まる瞬間。
呼吸が止まりそうになる方もいます。
そのとき、
ほんの少し香りを使います。
深呼吸をひとつ。
肩が少し下がる。
目の奥の力が、少し抜ける。
私はその変化を、
何度も見てきました。
香りは魔法ではありません。
でも、
あなたの神経に
「大丈夫」と伝えるきっかけになることがあります。
⸻
それは治療ではありません。
「ここにいますよ」
「急ぎませんよ」
という合図です。
人は、
安心すると呼吸が変わります。
呼吸が変わると、
身体が変わります。
⸻
なぜここまでやるのか
歯科が怖いという理由で、
必要な治療を諦めてきた方を
私はたくさん見てきました。
痛みよりも、
恐怖のほうが強い。
だから私は思いました。
匂いだけでもいい。
塗るだけでもいい。
あなたが一歩踏み出せるなら、
できることは全部したい。
⸻
あなたへ
もし今、
藁をもすがる思いで
このページを読んでいるなら。
大丈夫です。
強くならなくていい。
怖くてもいい。
あなたのペースでいい。
歯科医院は、
我慢する場所ではありません。
ここは、
呼吸を取り戻す場所です。
私は、
あなたの味方です。


